側彎症について

脊柱側彎症の治療

装具療法、そして手術療法があります。側彎症の初期のカーブが軽い時期で(Cobb 角25度ぐらい)、さらに進行することが予想される場合には、装具療法を行う事が従来は勧められていました。 装具療法にもかかわらずカーブが進行増悪する場合には、手術治療が一般的な選択肢になります。 手術には、後方矯正固定術と前方矯正固定術があります。

<後方矯正固定術>

後方矯正固定術は背中の正中に手術創をおいて、脊柱の後方の要素を展開してそこへスクリューやフックを挿入してロッドと連結して、脊柱をねじり戻す操作や、圧縮や牽引といった操作を加えて、脊柱を出来るだけまっすぐに、同時にねじれをできるだけ減らすものです〔図8〕。 一般的に前方矯正固定術と比べて固定する脊柱の範囲が長くなります。固定力は強固です。

 

<前方矯正固定術>

前方矯正固定術は、開胸後腹膜を展開して、脊柱の前方要素を展開して、そこへスクリューを挿入してそれをロッドと連結して、脊柱への圧縮操作や、ねじり戻す操作を加えて、脊柱を出来るだけまっすぐに、同時に出来るだけねじれを除くものです。 一般的に後方矯正固定術と比べて4椎体ほど固定範囲は短くなります。脊柱変形に対する矯正力は強力です。

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▲図8

小切開での脊柱変形前方矯正固定手術

上述のように、前方矯正固定術は、短い固定範囲で強力な矯正力を発揮します。しかしながら、胸椎のカーブに対しては、従来、肩甲骨周囲から乳房下前までの長い斜めの切開を必要としてきました〔図9-1〕。脊柱の変形が矯正できても、大きな手術痕が残るのは患者さんにとって喜ばしいことではありません。

 

そこで、小切開で脊柱変形の前方矯正固定術が出来ないかと考え、それを可能にする手術システムについて1994年から研究開発を進めてきました。1995年からは日本の医療器械メーカーとの共同開発として、新しい手術システムの開発を進めてきました。 すなわち、脊柱変形の前方矯正固定術を内視鏡を利用しながらわきの下の小切開で行います。これは江原の考案で、日本の医療器械メーカーと共同で10年以上ににわたり研究開発と臨床を行ってきました。 わきの下のライン上の6-7箇所の2cm程度の小切開や、あるいは7cm前後の2箇所の小切開などで手術を行います〔図9-2〕。手術痕がわきの下、すなわち上腕の下に隠れて目立たなくなります。体の後ろから見て手術痕がわからないことになります。〔図9-3〕

 

図9-1
図9-1
図9-2
図9-2
図9-3 特発性側彎症に対する小切開手術の創部手術痕がわきの下に隠れてわかりにくい
図9-3 特発性側彎症に対する小切開手術の創部手術痕がわきの下に隠れてわかりにくい

現在までに、40例以上の小切開での前方矯正固定術を行なってきました。高い矯正率を得ることができます。手術創がわきの下に隠れますので、手術痕があまり気にならなくなります。若い女性が多い特発性側彎症の治療にとって利点になります〔図9-4〕。

図9-4
図9-4
図9-4
図9-4
図9-4
図9-4
図9-4
図9-4

また、胸腰椎カーブに対しては、従来の胸椎カーブに類似した胸郭や腹壁の大きな斜切開ではなくて、体幹の腋窩線(わきの下の延長線上)上を縦方向に出来るだけ短い手術創で切開して、手術を行う方法を開発してきました〔図10-1〕。 この場合も、胸椎と同じように手術痕が体の前からも後ろからも見えません。本法も高い矯正率を得ることができます〔図10-2〕。 胸腰椎カーブでは骨盤が傾斜して、ベルトやスカートのウエストラインが傾くとか、スカートの裾が傾くなどということが発生しますが、術後には、脊柱がまっすぐになり、骨盤の傾斜が消失します〔図10-3〕。

図10-1
図10-1
図10-2
図10-2
図10-3
図10-3

成人側彎症とは

年齢が40代、50代、60代、70代での脊柱側彎症もなぜか最近急速に増加し、その手術も大変多くなってきております。若いころからの脊柱側彎症を放置して、それが年齢とともに悪化したものを指すと考えて差し支えないものと言えます。 若い方の側彎症と比べて、左右へ体のバランスを失うことや脊柱後彎症(背中が丸くなってしまうこと)や脊柱管狭窄症を合併することも多く、また骨が脆弱になっていることなど、若い方の側彎症手術よりもやや難しい手術と言えるかもしれません。また、年齢を考えると手術は?という心配もあろうかと思います。しかしながら、手術が予定通りにいきますと、胸が押さえられての呼吸苦やおなかを押さえられての食欲不振などが払拭されます。背筋が伸びてバランスを回復しますので日常生活が楽になります〔図11〕。 最近、テリパラチドという注射薬で骨粗鬆症の治療を強力に行うことができるようになりましたので骨粗鬆症を治療しながら手術を行うことが可能になっています。

図11
図11
図11
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